サンゴ礁は「海の森」とも呼ばれ、多様な生物を育むだけでなく、沿岸環境の安定化、観光や漁業など地域産業の基盤としても大きな役割を担っています。しかし、海水温の上昇、濁りの増加、台風・高波、沿岸開発などによって、その生息環境は年々変化しています。こうした変化を正確に把握するために欠かせないのが、サンゴ礁分布状況の継続的な調査です。
健全なサンゴ礁は、海洋生態系を支える基盤として機能します。小型の魚類や甲殻類のすみかを提供し、産卵場・育成場としても重要です。また、波エネルギーを吸収することで海岸侵食を防ぎ、地域の防災にも貢献しています。
これらの価値を維持するためには、どこにサンゴが分布し、どのような状態にあるのかを把握することが不可欠です。
近年、海洋環境の変化は加速度的に進んでいます。特に白化現象や病気の発生は、短期間でサンゴ群集の構造を大きく変えてしまうことがあります。
サンゴ礁分布調査を行うことで、生息域の広がり、サンゴの種類や群集構造、劣化の兆候を早期に把握できます。こうしたデータは、保全計画の立案、環境アセスメント、地域の漁業管理、海洋保護区の設定などにも活用され、持続可能な沿岸利用に役立ちます。
サンゴ礁分布の把握には、広範囲を効率的に計測できる技術が求められます。当社では、独自の海底マッピングシステム SSS(Speedy Sea Scanner)を用いて、海底地形・海底状況を高精度に可視化します。
SSSは光学カメラを用いた迅速な海底スキャンが可能で、水中ドローンや船上からの曳航により、広範囲のサンゴ礁を短時間で記録できます。特にサンゴ礁のような複雑な地形では、従来の手法よりも効率的に分布状況を把握できる点が大きな強みです。
取得したサンゴ礁分布データは、多様な用途に活用できます。
特に、複数年にわたるモニタリングを行うことで、サンゴ礁の回復・衰退の傾向を把握し、効果的な保全対策につなげることができます。
サンゴ礁は水深・潮流・透明度などの影響を受けやすく、調査が難しい環境でもあります。自然条件が変化しやすいため、計測タイミングや機材の選定が重要になります。また、調査データの解析には専門的な知見が求められます。
今後は、AIを用いた自動分類や時系列比較が進み、サンゴ礁の状態変化をより迅速に評価できるようになると期待されています。
サンゴ礁は、美しい景観をつくるだけでなく、地域の産業や防災、生物多様性の維持など、さまざまな価値を持つ海の重要な資源です。その価値を未来につなぐためには、科学的根拠に基づいた「現状把握」が欠かせません。
ウインディーネットワークは、海底マッピングシステム SSS を活用し、サンゴ礁分布の見える化を通して、持続可能な海洋環境の実現に貢献していきます。
海底マッピングシステム