洋上風力発電は、海上に設置された風車を利用して風の運動エネルギーを電気に変換する仕組みです。風が風車のブレードを回すことで、回転軸が動き、内部の発電機を通じて電気が生まれます。海上は風が強く安定しているため、陸上よりも高い発電効率が期待できます。
最大の違いは設置環境です。洋上は風況が安定しており、広大な空間を確保できるため、大型の風車を多数設置することが可能です。一方で、建設や保守にかかるコストが高く、天候や海象条件により作業が制限される点も課題です。
着床式は、風車を海底に直接固定する方式で、30〜60m程度の浅い水深域に適しています。主なタイプとして、施工が比較的容易で現在最も普及しているモノパイル型、格子状の鋼構造により深海や高波浪にも対応できるジャケット型、そして重りによって海底に安定させる重力型があります。それぞれのタイプは、設置場所の海底地質や気象・海象条件に応じて使い分けられます。
浮体式は、構造物を海面に浮かべて係留することで安定を保つ方式で、深海域や急深な海底地形でも設置が可能です。代表的なタイプとして、長い円筒形の浮体を海中深く沈めることで安定性を確保するスパー型、複数の浮体を組み合わせて浮力と重量のバランスで保持するセミサブ型、そして張力を持つ係留索でプラットフォームを固定するTLP型(テンションレッグプラットフォーム)があります。これらは水深や設置コスト、維持管理のしやすさを考慮して選定されます。
基礎構造の選定は、水深、地盤条件、波浪、風況、設置コストなどを総合的に判断して決定されます。たとえば日本では急深な海域が多いため、浅海域向けの着床式よりも、より柔軟に対応できる浮体式の導入が今後増加することが見込まれています。
日本では再生可能エネルギーの柱として洋上風力に注目が集まっています。政府は2030年までに最大で10GWの導入を目指しており、各地で公募事業が進行中です。特に秋田県や長崎県などが先行地域として注目されています。
欧州、とくにイギリスやドイツ、デンマークは洋上風力発電の先進地域であり、ノウハウが蓄積されています。浮体式洋上風力発電など新技術の開発も進んでおり、日本もそれに倣って設備の大型化・効率化が求められています。
塩害や波の衝撃、強風などにより、洋上設備は陸上よりも早く劣化します。特にブレードや支柱、ケーブル接続部の腐食や損傷は重大な発電停止を引き起こす可能性があります。加えて、台風などによる気象リスクも無視できません。
洋上設備はアクセスに制限があり、荒天時には点検や修理が遅れがちです。また、夜間や冬期の作業は安全性確保が難しく、迅速な対応が物理的に困難な場面も多々あります。
洋上風力設備は年に数回、計画的な定期点検が行われます。点検では機器の動作確認、腐食の有無、締結部の緩みなどをチェックし、故障の予兆を早期に発見することで大規模なトラブルを未然に防ぎます。
近年ではドローンを活用したブレード点検や、センサーによる遠隔監視システムが普及しつつあります。これにより人が海上に出なくても異常を検知でき、安全性と効率化の両立が進んでいます。AIを活用した画像解析による予兆検知も実用段階に入りつつあります。
洋上風力設備では、海中に露出している基礎構造やケーブルなどに貝類や藻類、フジツボなどが付着する「マリングロス」が発生します。これにより、構造物の表面が腐食しやすくなったり、水中カメラやセンサーの視界が遮られたりといった問題が生じます。対策としては、定期的な清掃作業や防汚塗料の塗布、付着しにくい表面処理の導入が効果的です。最近では、水中ドローンによる遠隔清掃や、マリングロスの付着状況をモニタリングするシステムも実用化されつつあります。
ウインディーネットワークでは、洋上風力発電の運用・保守(O&M)において、トータルなソリューションを提供しています。
当社は、マルチビーム音響測深機やサブボトムプロファイラ、サイドスキャンソナーなどの調査機器を駆使し、海底地形・地質の把握から磁気探査、目視調査に至るまで、精密な点検体制を構築しています。また、濁水環境用水中カメラを用いた高精細な水中映像による設備確認も可能です。
海底ケーブルトラッキングシステムを用いた海底ケーブルの位置・埋没深度確認や、濁った海域でも使用できる専用カメラにより、これまで困難だった環境でも正確な診断が可能となりました。これにより、損傷や沈下などのリスクを早期に発見し、長期的な運用の安定化を実現します。
ウインディーネットワークは、各種海洋調査やエンジニアリング業務の実績に基づき、お客様ごとのニーズに応じた柔軟なO&Mソリューションを提案します。詳細についてはこちらをご覧ください。
洋上風力発電向け海洋調査ソリューション