水中調査において「見る」ことは基本でありながら最も難しい行為でもあります。水は光を強く吸収・散乱させるため、陸上のようにカメラを向ければ見えるという環境ではありません。その制約の中で活躍しているのが、音を使って可視化する音響イメージングと、実際の映像を取得する光学カメラです。
本稿では、この二つの技術の違いと役割分担、そしてどのように使い分け・組み合わせるべきかを整理します。
音響イメージングは、音波を水中に発信し、対象物から反射して戻ってくるエコーを解析することで水中の様子を可視化する技術です。濁りが強い水域や深海、夜間など、光学カメラがほとんど機能しない環境でも安定して情報を取得できるのが最大の特徴です。
音は光と比べて水中で減衰しにくく、条件が整えば数十メートルから数百メートル先まで到達します。この特性を活かし、マルチビーム測深機やサイドスキャンソナーといった音響機器は、広い範囲を効率的に把握するための「探査」や「全体把握」に用いられています。
一方、高分解能の音響イメージングソナーは、到達距離よりも分解能を重視した装置であり、比較的近距離の範囲を高精細に「観察」することに適しています。濁水環境や夜間において、構造物や物体の形状、挙動を視覚的に確認できる点が大きな特徴です。
音響イメージングソナー
光学カメラは可視光を使って実際の映像を取得する装置です。色、質感、細部の形状など、人間の目に近い情報を得られる点が最大の利点です。
例えば、海底構造物の腐食状態、生物の付着状況、底質の見た目の違いなどは光学映像でなければ判断できません。そのため「確認」や「記録」、「説明資料」としての価値が非常に高い技術です。
ただし、水中では濁り・浮遊物・光量不足といった要因によって、視認距離は数十センチから数メートル程度に制限されることが多く、広域の探索には向きません。
両者の関係は「どちらが優れているか」ではなく、「何を目的とするか」によって役割が決まります。
音響イメージングは「広く探す」「位置を把握する」「異常候補を見つける」役割を担い、光学カメラは「近づいて確認する」「状態を判断する」「証拠として残す」役割を担います。つまり、音響で見つけ、光学で確かめるという流れが基本になります。
例えば海底ケーブル調査では、まず音響イメージングでケーブルの位置や埋設状況を把握し、異常が疑われる箇所に対して光学カメラで接近し、被覆の損傷や露出の有無を確認します。
港湾施設や構造物点検でも同様に、音響で全体像を捉え、光学で詳細を確認することで、調査の効率と信頼性を両立できます。このように両者は競合する技術ではなく、補完し合う関係にあります。
ウインディーネットワークでは、音響イメージング装置と水中光学カメラを併用し、目的に応じた最適な調査フローを構築しています。 広域把握から詳細確認までを一連の流れとして設計することで、調査の抜けや無駄を減らし、より信頼性の高いデータ取得を実現しています。
技術そのものだけでなく、「どう組み合わせ、どう解釈するか」こそが水中調査の品質を左右します。 音響と光学、それぞれの特性を理解し、正しく役割分担させることが、これからの海洋調査においてますます重要になっていくでしょう。
調査技術