調査環境ごとに異なる写真測量の特性
「写真測量」は陸上だけではない
写真測量は、複数の写真から対象物の形状や位置関係を解析し、三次元的な情報を取得する技術です。 近年ではドローンの普及により、陸上や構造物を対象とした写真測量が広く活用されていますが、 同様の考え方は水中にも応用されています。
本記事では、ドローンを用いた写真測量と、海中で行う海底写真測量の違いや、 それぞれの特性・活用シーンについて整理します。
ドローン写真測量とは
ドローン写真測量は、上空から連続的に撮影した画像を解析し、地形や構造物を三次元データとして可視化する手法です。 UAVを用いることで、短時間かつ高密度にデータを取得できる点が特長です。
主な活用分野には、地形測量、造成地の出来形管理、災害現場の記録、インフラ点検、 海岸線や河川の状況把握などがあります。 上空から広範囲を俯瞰できるため、面的な把握や経年変化の比較に適しています。
海底写真測量とは
海底写真測量は、水中ドローンやROV、ダイバーなどによって海底や水中構造物を撮影し、 取得した画像をもとに三次元モデルを構築する手法です。 水中環境では光量や濁りの影響を受けやすく、撮影条件や機材選定が成果の品質に大きく影響します。
浅海域や比較的条件の良い環境ではダイバーによる撮影が有効な場合もありますが、 水深や安全面の制約から、ダイバーが到達できない深度や長時間の作業が困難なケースも少なくありません。 そのような場面では、遠隔操作による調査機材が重要な役割を担います。
広範囲の状況把握や対象物の位置・形状を効率的に捉える手法として活用されるのが、 SSS(Speedy Sea Scanner)です。 SSSは光学カメラを用いて海底を連続的に撮影し、ダイバー調査が難しい水深帯においても、 面的な情報取得を可能にします。
さらに、ROVに搭載した海底マッピングシステム「SSS-100」では、 最大水深約100mまでの調査に対応しており、 沿岸域からやや深い海域に至るまで、安定した写真データの取得が可能です。 これにより、従来は把握が難しかった水深帯においても、 写真測量による記録・可視化が行えるようになっています。
このように、ダイバー調査、SSS、ROVを適切に組み合わせることで、 水深や環境条件に応じた柔軟な海底写真測量が可能となります。
「SSS-100」で3次元化した海底敷設物
海底マッピングシステム
両者の違いと補完関係
ドローン写真測量と海底写真測量は、対象環境こそ異なりますが、 どちらも「写真を基に三次元情報を構築する」という共通の技術思想に基づいています。
一方で、取得可能な範囲、使用機材、解析条件は大きく異なり、 単独では把握できない情報も存在します。 例えば、海岸部や浅海域では、上空からのドローン写真測量と、 水中からの海底写真測量を組み合わせることで、 陸域から水中まで連続した空間情報の取得が可能になります。
活用が期待される分野
両手法を適切に使い分け、あるいは組み合わせることで、 以下のような分野での活用が期待されています。
- 海岸・港湾・河口部の維持管理や変状把握
- 災害前後の地形・構造物の記録と比較
- 水中文化財の記録・保存・可視化
- 環境調査や生態系把握における空間情報取得
陸と海をつなぐ一体的な調査へ
調査対象が陸上か水中かによって、必要となる技術やノウハウは大きく異なります。 しかし、実際の現場では、陸と海を切り分けずに一体として捉える視点が求められるケースも少なくありません。
ドローン写真測量と海底写真測量の両方に対応できる体制は、 調査の連続性や成果の整合性を高める上で大きな意味を持ちます。 今後も、空・水中双方の技術を活かした総合的な調査手法が、 さまざまな分野で重要性を増していくと考えられます。
空間情報技術

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