
Windy-3Sとともに歩んだ無人航行の最前線から
2011年の東日本大震災後、福島第一原子力発電所事故による海洋環境への影響を調査するため、無人観測船「Windy-3S」が誕生しました。 日本原子力研究開発機構(JAEA)からの依頼を受け、海底放射能の計測を目的とした無人観測船として、東海大学 千賀康弘教授協力のもと当社はシステム開発・改良を重ね現在も定期的な観測を行っています。
この無人観測船は、放射線の測定だけでなく、海底土サンプルの採取や海底の写真・動画撮影、海水中の温度及び電導度の測定、海底測量など、多目的な海洋調査が可能です。 開発当初、定員0という「無人船」への制度的な前例はなく、小型船舶検査証の取得なども手探りで進める必要がありました。 それでも、海洋調査の将来において不可欠なインフラとなるという確信のもと、技術と制度の両面で前例を切り開いてきました。
冗長化通信が支える遠隔操縦の信頼性
無人観測船の運用において最も重要なのは、安定した通信環境の確保です。当社では平常時だけでなく、緊急時や災害時を想定した冗長性のある通信システムを構築しています。 衛星通信、キャリア回線、VPNの3つの経路を併用することで、安全かつ安定した遠隔操縦が可能となり、現場に人がいなくても高度な観測作業を継続できます。
操縦士が直面する遠隔操縦の現状と課題
無人観測船運用における遠隔操作が当たり前となった今、実際に現場に人がいなくて本当に良いのか、という疑問が改めて浮かび上がっています。 遠隔操作によるマルチビーム測深、海底放射能観測、計量魚探観測は、高効率かつ正確に実施でき、何よりも船酔いの心配がありません。 操縦席から見るデータの流れは滑らかで、作業は静かに進みます。
しかしその一方で、磯の香りや潮風を感じることもなく、操船の「手応え」ともいえる感覚は、遠隔では得られません。 技術が進歩した今だからこそ、海という自然とどのように向き合うべきか――その関係性が、また新たな段階へと問い直されているのかもしれません。
ウインディーネットワークが描く未来
無人観測船「Windy-3S」は、単なる技術の象徴ではなく、未来の海洋調査を変える先駆けとして進化を続けています。 ウインディーネットワークでは今後も、観測精度の向上とともに、現場での安全性と持続性を両立させるソリューションを追求していきます。