
ROVの定義と仕組み
ROV(Remotely Operated Vehicle)は、船上または陸上から遠隔操作によって動作する無人潜水機です。ROVはケーブルで接続されており、搭載カメラやセンサー、マニピュレータ作業など、深海や濁水環境でもリアルタイムにデータを取得・記録できます。
ROVの主な特徴と利点
- 長時間稼働:ケーブルを通じて船や発電機から電力を供給されるため、バッテリー交換の手間がかからない。
- マニピュレータ搭載:物を掴んでの作業や回収・スイッチ操作なども可能。
- 高推進力・精密操縦:スラスタを多方向に制御し、固定位置での観察や高負荷作業にも対応。
- 安全性の向上:人間が潜ることができない深海や危険環境で活躍し、事故リスクを大幅に軽減。
ROVの活用シーン
- 海底地形・構造物点検:ダム堤体やケーソン基礎の支持層調査など、深度45m以上も可能。
- インフラ・港湾点検:橋脚、送電塔基礎、海底ケーブルや管路の安全確認。
- 学術・海洋研究:深海生物観察、洞窟環境調査、沈没船の探索などにも活用。
- 救助・探索:行方不明者の捜索など多様な業務にも応用。
ウインディーネットワークにおけるROV活用
当社では、小型ROV(遠隔操作無人潜水機)を活用し、高精度な海中調査や構造物点検を行っています。以下に当社が提供する主な活用事例をご紹介します。
海底マッピングシステム
当社の海底マッピングシステム「SSS‑100(Speedy Sea Scanner)」は、4連の高解像度光学カメラを搭載したROVで、水深100mまでの海底を撮影し、高精細なオルソ画像や3Dモデルを生成します。東京大学との共同開発により完成したSSSの後継モデルとなり当社独自機種となります。
詳細はこちら:海底マッピングシステム[SSS-100]
海底ケーブルトラッキング調査
小型のROVに金属探知機を搭載し、海底に埋設されたケーブルの正確な位置(平面・深度)を特定します。独自開発の解析ソフト「MetalScope」と組み合わせ、リアルタイムな調査・可視化が可能です。
詳細はこちら:海底ケーブルトラッキングシステム
濁水環境での構造物点検
濁った海域や夜間など通常のカメラでは対応できないことがありますが、当社はROVに濁水環境対応型水中カメラや音響イメージングソナーを搭載し、港湾構造物や沈没遺物の可視化を可能にしています。
詳細はこちら:音響イメージングソナー/濁水環境用水中カメラ
文化財・戦争遺跡の水中記録とVR化
ROVを活用して、海底に眠る戦争遺跡「海龍」や文化財(伊豆沖に沈んだ江戸幕府の鬼瓦など)を撮影し、フォトグラメトリによって3Dモデルを作成。Unreal Engine上でVR化し、文化庁への技術紹介も行いました。
調査事例:「海龍」調査事例
このようにROVは、インフラ点検から海底ケーブル調査、文化財保全まで、ウインディーネットワークの幅広い海洋調査業務に欠かせないツールとして活用されています。
まとめ
ROVは、深海や複雑な水中環境で人に代わる“目と手”となる存在です。作業の安全性・効率性が高く、調査・研究・救助・インフラ維持など多様な分野で不可欠な技術となっています。ウインディーネットワークは、こうした高性能ROVを活用し、水中調査の高度化を常に目指しています。